心停止

 

 

日時:2009年9月28日、9:40AM頃
場所:埼玉県入間市黒須グランド
救助者:五十嵐 篤さん、熊野 博仁さん、伊藤 健二さん、尾沢 浩史さん、錦古里 太一さん
MFA受講日:2007年7月9日、ベーシック受講
推薦者:松田 和彦インストラクター(No. 201178)

 

 

出来事と救助者がとった行動:

 

埼玉県理容生活衛生同業組合で野球大会を開催した時のことです。試合中に,深谷支部の男性(60歳)が1塁ベースを回り、2塁ベース上で突然前に倒れたのですが、 うつ伏せで呼吸が荒く、グランドの砂を吸い込む状態でした。脳には影響がないと判断し、数人で,頭、胴体、足と同時に反転、仰向けにして救急車を要請しました。 その直後に顔色が急変し、呼吸が停止して、呼びかけにも反応がないため、心臓マッサージをしました。一時的に呼吸が戻るものの、再び停止。気道確保、心マッサージ、 脈拍チェックを手分けをしました。人工呼吸のためのバリアを用意し、顔からの出血はタオルで止血し、救急隊の到着まで声をかけ続けました。 到着後は速やかに救急隊に現状報告、引き継ぎをしました。倒れた人は無事に退院することができたと、本人から後日連絡を頂きました。

 

 

救助者の感想:

 

突然,目の前で人が倒れたことにびっくりしました。何度か講習を受けていたことと、同じ講習を受けていた仲間がいてくれたので、気持ちの余裕ができ、 コンタクトをとりながら適切な対応に近い行動が自然にとれたと思いました。一人の力というより、みんなの力、協力があったのが一番の要因だと思います。 同じ講習を受けた熊野、伊藤、小澤、錦古里やたくさんの仲間がいたおかげです。講習を受け、事前に備える大事さを知ることができました。

編集者註: CPRだけで命をつなぐことは大変困難なことでもありますが、MFAプロバイダーの皆さんの尽力が功を奏した希有なケースと思います。 皆さんの一致団結した行動に感動を覚えます。

 


 

日時:2008年7月16日、午前8時頃
場所:横浜市緑区
救助者:森 哲也

MFA受講日:2008年4月、ベーシックプラス受講

 

 

出来事と救助者がとった行動:

 

2008年7月16日、午前8時頃、仕事に行くため自宅を出たところ、道の向こう側に座り込んだ老人(男性)を抱きかかえた老人(女性)を発見、近づくと、男性は意識がないようだった。近くにいた女性が119番をしていた。意識がなくなってから1分くらいらしかった。 

抱きかかえた女性に状況を確認後、男性を寝かせて呼吸を確認したところ、呼吸もなく心停止状態だったため、胸部圧迫のみのCPRを開始した。 救急隊は、その後1分位で到着し、2度目のAEDショックで心拍再開、病院へ移送されました。

現在、男性は心臓の手術をして意識も回復、後遺症もないそうです。

 

 

救助者の感想:

 

ベーシックプラスを受講してから、いつかはこのような状況に遭遇するとは思っていたが、こんなに早くおとずれるとは思っていなかった。しかし、いざ、その場になると「自分がやらなければこの人は死んでしまう」と思い、すぐ行動に移ることができました。 男性が回復したこともあり、MFA講習を受けておいて本当に良かったと思えました。

注: 森哲也さんは、この経験から後日(8月28日)MFAインストラクター資格を取得し、講習活動に従事しています。

 


 

日時:2006年4月4日、8:15AM頃
場所:東京駅
救助者:山本 加世(MFAインストラクター No.200685)

 

 

出来事と救助者がとった行動:

 

2006年4月4日(水曜日)のこと、東京駅で、午前8時15分頃、人ごみを発見、近づいて見るとすでにAEDを装着した65歳の男性が倒れていました。 現場の女性が1ショックを施したあと、私へバトンタッチ、CPR4サイクルを2回施したあと、通電(2回目)、CPR4サイクルを1回施したあと通電(3回目)、そのあとはCPRのみを4サイクル7回施したところに救急隊が来ました。 (レスキュー呼吸はライフガードの資格を持つ駅員がすぐにやってくれました)

私は救急隊員と警察官に報告をしたあとで、現場でAEDを使っていた女性のケアを始めました。彼女は看護師資格を取ったばかりで経験が浅いため一度は通りすぎたものの、 やはり気になってAEDをあけたそうです。彼女が現場に戻った時は、通行人の通報により警察がかけつけていた時で、その直後に駅員がAEDを持ってきたそうです。 男性は倒れてから10分は経っているようでした。

彼女の手を握り、背中を触りながら話を聞きました。泣ければ泣いてしまったほうがよいと告げると、辛そうに「こわかった」と泣き、私もしばらくはそばに付き添いました。 私の連絡先とPTSDのケアの説明をして彼女と別れました。

その後、消防の方から伺いましたが、男性は結局蘇生できなかったものの、ご家族はおかげで最後の時間を一緒に過ごすことができたと、感謝してくれたそうです。

 

 

救助者の感想:

 

自分のバリアーだけで、駅員、女性が素手で行っていることに配慮をしなかった(気がまわりませんでした)ことが反省点です。 また、マウスシールド越しとはいえ、マウス・トウ・マウスに躊躇してしまいました。(正直、生理的にどうしてもできませんでした)

AEDは誰にでも使えます。でも、自分の体を守ることはトレーニングをしないと得られないことだと思いました。私にとっては、初めてのCPR体験でしたが、 この技術は「使える」技術だと改めて実感し、確信することができました。

消防の方は事情を聞いて彼女にお礼を言って終わりましたが、私は救助者側のその後のケアーが本当に大事と思いました。 そして、すべてではなくても早急のケアーで改善できると思い、これを伝える使命を東京駅で受けたと思いました。

私自身、今回ほど仲間の存在に感謝したことはありませんでした。MFAインストラクターの山田かほるさん、山田政利先生、熊澤インストラクターには、 電話、メールでのひっきりなしのフォローを頂きました。そして、みんなが言う言葉は「何時でもいいから辛かったら電話して」です。 私は早目のこうしたフォローのおかげで当日はよく眠れて、翌日はかなり冷静に考えることができました。皆さんのフォローのおかげです。そして私は太いのは体だけではなく神経も太いみたい・・・もう大丈夫です。

編集者註:その後、山本加世さんは消防署から感謝状を頂いたそうです。 直後のアフターショックから少し時間が経った後でも影響が出ることがあるので、何度でも、同じことを同じ人にでも、 遠慮せずに話を聞いてもらうことが大切だということを山本加世さんの経験が実証してくれたようです。MFAインストラクターの鑑ですね。

 


 

日時:1996年10月9日 11:35am頃
場所:東京都北区、高齢者施設
救助者:A.U.さん(MFAプロバイダー、ご本人の希望によりイニシャルで記載)

MFA受講日:1995年12月9日

 

 

出来事と救助者がとった行動:

 

高齢者施設での活動中、別のへやの職員が突然私を呼びにきた。行ってみるとボランティア活動中の女性が床に倒れていた。 手当の訓練を受けている男性ボランティアと二人で対応した。患者には呼吸も脈も感じられなかった。MFAでは救助者1人のCPRを習ったが、男性救助者が人工呼吸を躊躇したので、彼に胸部圧迫を担当してもらって二人CPRを行った。

CPRのリズムと手順を思い出しながら続けると、途中何度か患者が荒く呼吸を始め脈も戻る。廻りに安堵の色が浮かぶが、チェックをしていると再び呼吸も脈もとまってしまい、CPRを繰り返した。しばらくして救急隊員が駆けつけ、患者を病院へ搬送した。

 

 

救助者の感想:

 

その後、患者は病院で息を吹き返し、後遺症もなく無事に退院したとのこと、ご本人から自筆のお手紙をいただいた。手紙には、「あの高齢者施設で倒れたから私は助かったのです。家でたった一人の時だったら、誰も気付かないうちに死んでいたかもしれません。本当にありがとうございました。」とあり、彼女の回復を嬉しく思うと共に、私自身とても幸せな気持ちになった。

私が所属している福祉協議会とボランティアセンターは毎年、ボランティアを対象にMFA講習会を開催しているが、この高齢者施設は奇しくも一昨年の会場でもあった。ボランティア講習の一環としてファーストエイドが必要だろうと漠然と考えて毎年受講してきたMFAの講習だったが、本当に役に立った。

呼吸を入れた時に最初はうまく入らなかったが、なぜだろうと考えた時、「口をもっと大きく開けなくては」と気付いたが、講習を受けた/受けないの差はこのようなところに出るのだろうと実感した。 良く知っている人だったので今回はバリアなしでできたが、全く知らない人だったら躊躇したかもしれない。また、逆に、私が何かの病気をもっていたらと考えると、感染防止は相互に大切な事だと思った。

また、ファーストエイドは一生に一度だけ受講すればいいのではないことを痛感した。一緒にCPRを施した男性は、お勤めの頃、毎年ファーストエイド講習を受けて来られたそうで、自然に体が動いたとのこと。今後もボランティア事業にかかわらず受講し続けてゆきたいと思う。

備考/救助者は、その後、東京消防庁・赤羽消防署長より感謝状を頂いている。